中居に国分、田原俊彦。ジャニーズ系への容赦ない狙い撃ちが示す「死人に口なし」どころか、生きた人間すら問答無用で葬る時代【宝泉薫】「令和の怪談」(5) |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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中居に国分、田原俊彦。ジャニーズ系への容赦ない狙い撃ちが示す「死人に口なし」どころか、生きた人間すら問答無用で葬る時代【宝泉薫】「令和の怪談」(5)

「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(5)【宝泉薫】

田原俊彦

  

◾️ ジャニーの死後でなくては告発が不可能だった〝本当の理由〟

 

 こうした「屈折」については、いくらか想像できていたものの、これほど根深いとは思っていなかった。そして、彼女は叔父と母が遺した事務所を守り切れなかったのではなく、あえて守らなかったのではという疑念が呼び起こされた。母や叔父に好感情を持てない娘にとって、事務所はむしろ憎悪の対象であり、タレントやスタッフを守れるなら、いっそ潰れても構わない、そんな気持ちも働いたのではないか。

 この「試し読み」部分から、一昨年の12月に書いた筆者自身の記事を思い出したりもした。『「死人に口なし」でジャニーズ事務所を豊臣家や大日本帝国、安倍晋三にしてはいけない理由』だ。

 それこそ、ジャニーズ事務所の崩壊は豊臣家のそれと似ている。秀吉という強烈な天才によって勃興した豊臣家は、その天才性がもたらした歪みによって、二代で滅んだ。ジャニーズ事務所もまた、ジャニーとメリーという天才姉弟によって栄華を極めたが、天才は同時に歪みも生む。ジュリーが事務所に抱いた憎悪的感情も、そのひとつだ。

 残念ながら、仕方ない。ジュリーが再び安楽を取り戻すには、事務所を畳むしかなかっただろうから。

 

 ただ、その結果、ジャニーズ事務所は真相不明のまま、おそらく実態以上のマイナスイメージを背負わされることにもなった。前出の記事でも書いたことだが、ジャニーの疑惑に関して、筆者の見方はむしろ逆方向に変わっている。騒動が起きる前は暴露本『光GENJIへ』に描かれているようなことも多少は行われていたかもしれないと感じていたが、現在では、あそこまでのことはなかったのだろうと考えているからだ。

 

 もちろん、ジャニーが長年、数多くの少年たちと関わってきた以上、そのすべてにおいて完璧な交流、いわば後腐れのない関係性を貫くことは無理。ときには、齟齬も生じて、ひどいことをされたと感じた少年もいただろうし、逆にジャニーがそう感じたこともあっただろう。

 いずれにせよ、彼の生前、一度も事件化されなかったという事実は大きい。どこかの新聞記者が被害を訴えたい人が見つからなかった的なことを言っているように、事件化できるほどのものは皆無だったのではないか。だからこそ、告発は彼の死後でなくては不可能だったのだ。もっとも、その告発が大量に行なわれたのも事実だが、後出しじゃんけんである以上、生前に事件化されなかったという事実よりは小さいといえる。

 そして、その大量の告発がある意味、信憑性を失わせてもいる。その告発がすべて事実なら、ジャニーのマネジメントやジャニーズ事務所の運営はとっくに破綻していたはずだからだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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